次の行動をとることです。
授業のねらいと同じですね。
次のことが期待されているのではありません。
- 授業の感想文。
- あなたの信念や理想、決意表明。
- ふと思いついたこと。
逆に言えば、あなたの内奥の真実について天分のひらめきで書くのではないわけです。だから、
手順や技術を知れば誰でもある程度は書けるようになる。
また、
次のことが求められているわけでもありません。
それとこれとのちがいは、「調べているか」「資料やデータにもとづいて議論しているか」「考察しているか」ということです。
つまり
問題は論証や議論の、方法、手順、過程。
1.確かに「手順や技術」で書くことが、ある程度はできます。しかし、私は、何の思いも込められていないレポートはあまり好きではありません。
手順や技術にすこしくらい難点があっても関心が躍動しているレポートのほうが良いと思います。
2.この通りやれという指示ではありません。この形式さえ整えれば満点というマニュアルでもありません。
以下、あなたの「関心」を育てたり生かしたりするために「使う道具」として、お読みください。
まず、対象を持つことが必要です。次の例で「とりくみやすさ」を比較してみてください。
- 社会について考えなさい。
- 現代社会における少年非行について考えなさい。
- 現代日本における少年非行の原因について考えなさい。
1よりも2が、2よりも3が、取り組みやすいはずです。
また、考察のためには観点が必要です。次の例で「とりくみやすさ」を比較してみてください。
- 少年非行の原因について考えなさい。
- 少年非行の原因について社会関係の観点から考えなさい。
- 少年非行の原因について「第一次集団」の理論から吟味しなさい。
下になるほど、何を調べればよいのか明確です。
まだありますが、このようにして対象と観点が定まれば、もう着手できるでしょう。つまりコツは次のようになりましょうか。
とりあげる対象と観点を決めて「とりくみやすく」してゆくこと
注意。「大きな問題を忘れろ」と言っているのではありません。こうして限定していっても「社会の現状をどう見るのか」「この社会をどうしてゆくべきなのか」。大きな問題を忘れないでください。そのための方略だったのですから。理論・仮説・概念は、考えを明晰にする方法なのです。
調べるとは、次のようなことを調べることです。
- 社会現象としての事実。
たとえば交通渋滞とか過労死の、事実やデータ。
- 現象を解釈・説明するための公理・仮説。
たとえば「トマスの公理」。
- 調査・分析の技法・手順。
たとえば「非構造的インタビュー」といったような。
- 公理や仮説がまとまった体系としての理論。
たとえば「小集団論」。
- 基本的な考え方としての枠組や思想。
たとえば「ポスト構造主義」における「権力」の概念。
とりあえずは1ができれば十分です。専門的に関心がある人は、できれば2を。慣れるにつれ、3 ~5を目指してください。
考えるとは、たとえば次のような作業をおこなうことにほかなりません。「沈思黙考」ではありませんので、ご注意を。
- 何が既知の事柄であり何が新しい知見であるのか、区別する。
- 事実の発見ばかりではなく、既知のことの説明法が新しいこともありえる。
- データを比較してみる。
- 理論をつかって解釈・説明してみる。
- 「なぜ」について推測してみる。
- 調べる方法や事実の捉え方について検討してみる。
- 良し悪しの評価とその根拠について判断してみる。
- そして自分なりにはどうまとめをし、どういう結論をくだすか。
「考察」とか「分析」の基本は、こういうことです。
論述とは、調べ、考えた結果について、整理整頓し、筋道だてて述べる、ということです。一般に、次の三部構成で書くとやりやすいでしょう。
- 序論 選んだ課題や方法
- 本論 調べた事実や理論の紹介・検討
- 結論 まとめ・評価
必要なら、本のように「章」や「節」に分けて書いてみてください。
「調べる」と言っても、ほとんどは、「他者の報告を読んでみる」ということになります。人様のお世話になるわけです。そのときは必ず出典を明記すること。
具体的に、次のような「~によれば」という表現を使うべきことになります。
「精神科医である町田は、その著書『心の科学』で、こう述べている。すなわち……」。
「社会研究機構の指摘によれば、△△という事実がある」。
「授業における説明を要約すれば、およそ以下のようだろう。すなわち……」。
これを怠ってはいけません。
出典不明は致命的な欠陥
適切な言及と盗用のちがいをおぼえておきましょう。基本ルールは次のようなものです。
- 明確な規則で自分の言葉と他人の言葉を区別する。
- 引用や要約の必要性・必然性を説明する。
- 引用する側に論述の主体性がある。
適切な言及はいくらおこなっても盗用になりません。むしろ「手堅い」作品になります。これは社会常識でもあるのでしっかり身につけましょう。詳しくは「言及のルール」項をご覧ください。