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言及のルール 中級編

……です。

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項目内目次 タイプ1 タイプ2 引用のコツ

重点

資料の掲げ方のルールを知りましょう

引用のコツをおぼえれば論の運びもスムーズに

 1セメ~4セメくらいのレポートでこれが厳密にできてないからといって不合格にしたりはしません 。が、熱意をもってとりくむ場合にはとりくんでみてください。 これの通りにゆかなくとも、引用のコツがわかってくるはず。

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資料の掲げ方

 形式はいろいろあります。 学会によっても異なります。以下に二つばかり示します。同一レポート中では一つの原則に従って記載してください。(専門にすすんだ方は自分の分野の原則に)。

 タイプ1 表記法の例

 他者の著作からの引用には必ず「カギカッコ」をつけて「引用であることを示す」(1)のようにし、さらに注釈番号を付け、注釈で文献を挙げて示す。
 「カギカッコ」の中は、「一言一句、原文とちがっていてはならない」(2)。だから、「途中でとぎれ」たように見える「 」もありえることになる。
 ミスは、ありうることとはいえ、絶無であるべきである。とりわけ、重要なデータや文言の引用におけるミスは許されない。たとえば、気象学者が寒暖計の数値を読みまちがえたら致命的であるのと、それは同じである。
 引用文のなかで作為的に文言を書き換えたら、それは「改竄」(かいざん)である。ありもしない原典やデータがあるかのように言いつのるなら、それは「捏造」(ねつぞう)である。これらは、科学者失格と見なされるのはもちろん、社会人としての基本常識 や責任感の有無を疑われるおこないである。
 他者の文言の「そのままの引用」ではなく、大意をあなたなりに要約して提示する時も、原典を明らかにしなければならない(3)
 御手洗はおよそ以上を「絶対の約束」とさえ述べている(4)

(1)御手洗庄一郎1987『引用のルール』岩並書店139頁
(2)天馬翔太、2003、「引用原則についての再検討」『社会学ジャーナル』(北東社会学会)第54号123-135頁124頁
(3)Davidson, John., 1994,The Art of Writing, Bread and Butter Press,p.45. 杉田誠訳1997『著述の技法』、北東大学出版会、48頁。
(4)御手洗、前掲、259頁。

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タイプ1 注釈の表記法

 例示の番号と照らし合わせて見てください。

  • (1) ……  著者、発表年、『著書名』、出版社、引用箇所の頁。
  • (2) ……  著者、発表年、「論文名」、『掲載誌名』(発行者)、巻号数、掲載頁、引用箇所の頁。
  • (3) ……  原著者,原著発表年,欧文書物は斜体, 原典の出版社,引用頁.訳者、訳発表年、『訳書タイトル』、出版社、引用頁。
  • (4) …… 2回目以降は、このようにしてよい。 「前掲書」、「前傾論文」も可。なお原典が英文なら、ibid.もしくはop. ct.(イタリックで)。

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タイプ2 表記法の例

 この挙示を怠ると、第一に、あなたの言うことが本当かどうかを読者や第三者が検証しようとしても、それができないことになる。「フェアーではないし、あなたにとっても損」(美土路 1988: 139)ということになる。
 いや、第二に、それどころか、場合によれば「剽窃」(ひょうせつ)と見なされることになるだろう(天馬 2003: 133-134)。文学や美術の世界で言う「盗作」である。これは大学のレポートでも同様である(御茶ノ水 2001: 45)。
 かりに他者の著作の「写し」によって正式の単位を得たとしたら、それは違法行為であろう(Davidson 1994: 651997: 75)。部分的であっても「依拠したなら必ず挙示しなければ」ならない(御手洗 1987: 154)。

文献

Davidson, John., 1994,The Art of WritingBread and Butter Press. (杉田誠訳、1997『著述の技法』北東大学出版会)。
美土路均、1988、『他人の意見、自分の意見』、昼飯堂。
御手洗庄一郎、1987、『引用のルール』、中央討論社。
御茶ノ水太郎、2001、『引用の手引き』、岩並書店。
天馬翔太、2003、「引用原則の再検討」、『社会学ジャーナル』(北東社会学会)、第54号:123-135。

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タイプ2 本文中での文献の示し方

  • 「こんなふうにカギかっこのあとに」(著者名 発表年: 引用頁)
  • 「翻訳本の場合は」(原著者 原著発表年: 原著引用頁=翻訳発行年: 翻訳引用頁)。

 頁数は、ある特定のページだけなら(御手洗 1987: 154)、複数頁にわたるなら(御手洗 1987: 154-155)のようになる。

タイプ2 文末の文献リスト(書誌情報)

  • 書物 ……  著者、発表年、『書名』、発行所。
  • 論文 ……  著者、発表年、「論文名」、『掲載誌名』、巻号数、掲載頁。
  • 翻訳 ……  原著者、発表年、洋書名は斜体、原著出版社(=翻訳者、翻訳発表年、『翻訳書名』、翻訳出版社)。

 なお、リストに並べる順番は著者の姓名のアルファベット順(欧文名がなければ五十音の場合もあり)。「名姓」文化圏の人名は Marx,Karl とひっくりかえし、ひっくりかえした印にコンマを入れる。

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引用のコツ

 次のような文があるとしましょう。かりに杉田さんが書いた1999年の著作だとします。

 明日は確かに晴れかも知れないし雨かも知れない。どんなに予測しても的中しないことがままある。それは確かにそうだ。そうなのだけれども、しかし、当たるも八卦の直観で占うことと科学的な観測によって予測することとは厳密に区別しなければならない。両者は自然観が異なるのだ。 予想的中率の程度差の問題ではない。それは今日の当然の常識であると思われる。したがって、これを混同しているかのような気象情報批判には首を傾げざるを得ない。たとえば 諸星の説は「気象情報に従っても明日は晴れと決まっているわけではない」 のだから「予報も結局は直感と同じ」などと皮肉っている(諸星 1991: 47)。しかし、そもそもいったい誰が明日は晴れだと断言したというのであろう。馬鹿げた議論だと思う。

 これを省略しながら引用する方法は次のとおり。かりにタイプ2でおこないます。

 引用の技法1

 杉田は「当たるも八卦の直観で占うことと科学的な観測によって予測することと……[略]……を混同しているかのような気象情報批判には首を傾げざるを得ない……[略]……たとえば 諸星の説は……[略]……馬鹿げた議論だ」としている(杉田 1999: 65)。

 このように引用内部に省略がある場合、それを示す記号は、……[略]……とか、……(全角幅に三点×2回)とか、[略](角括弧)とかと、決まっています。

 引用の技法2

 杉田は「当たるも八卦の直観で占うこと」と「科学的な観測によって予測すること」とを「混同しているかのような気象情報批判」の一例として 諸星(諸星 1991)をとりあげ、これを「馬鹿げた議論」と厳しく批判している(杉田 1999: 65)。

 このように省略しながら引用すれば、読む側にとっても大意をつかみやすくなります。また、これは引用者の見識による要約でもあるということになりますので、「写し」と見なされる危険性が少なくなります。

 引用の技法3

 あまりに含蓄が深いので一定部分をまとまって引用したい場合は、次。

 杉田は諸星をつぎのように批判した。

 「どんなに予測しても的中しないことがままある。それは確かにそうだ。そうなのだけれども、しかし、当たるも八卦の直観で占うことと科学的な観測によって予測することとは厳密に区別しなければならない。両者は自然観が異なるのだ。 予想的中率の程度差の問題ではない。……[略]……したがって、これを混同しているかのような気象情報批判には首を傾げざるを得ない。たとえば諸星の説は……[略]……馬鹿げた議論だと思う」(杉田 1999: 65)。

 つまり、諸星の気象情報批判は、科学と呪術の差異を「予想的中率の程度差」にしか求めていない誤りだというのである。

 このような場合、引用のあとに、「つまり……」のように、要点をまとめておけば、話のスジがしっかりしますし、また、単なる写しではないと見られることになるでしょう。

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