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事実・推測・評価

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項目内目次 事実と推測 推測と評価 

重点

事実と推測と評価の区別を。

「~と思う」という表現を、もっと細分化するのがコツ

 「~と推測できる」「~と見ることもできる」「~と評価できる」などが、日常用語ではすべて「思う」になってしまっています。これはしかし誤解を招きやすいのです。 ここまでくれば、以下は付け足しのようなものですが……

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事実と推測の区別

 例文に再注目(架空の例です)。便宜上、①②……という文番号を入れました。

  ①【表2】を参照すると、なかには3時間を超える地域も含まれていることがわかる(御手洗 2003: 485)。②つまり、この地域から都心に通勤している人々は、かりに5時ちょうどに帰路についたとしても、帰宅は8時ということになる。
 ③通勤時間の長短と家庭におけるいわゆる団らんの有無との間にはなにか関連があるだろうか。

 文①は事実認定(の紹介)です。文②は、書き手がそれをもとに推測している文。この二つをきちんと分けて書いています。

 推測と、臆測あて推量は、ちがいます。推測とは、「既知のことがらから論理を進めれば十分ついてゆける」と読者が判定しうるであろう、考えのこと。(推測の方法にはいろいろあるが省略。この場合は算術ですね)。

 文③は、 レポート全体のテーマのなかの小問題の提起、あるいは主題の展開です。文②は、ここへ論を進めるための方向転換をも兼ねています。もともとの御手洗の分析のねらいは、それとはちがったかもしれません。でもデータだけは借用した。つまり、御手洗のデータを自説のなかに「位置づけた」ことになります。他者の文言と自分の文言はきっちり分けておく必要があるのです。

 これを次のように書くと、「原著者による事実の指摘」と 、引用した人による「推測」や「位置づけ」を、ごっちゃにしたことになります。

 御手洗は……[略]……3時間を超える地域も含まれていることを明らかにしており、つまり、この地域から都心に通勤している人々は、かりに5時ちょうどに帰路についたとしても、帰宅は8時ということになるが、このことといわゆる団らんの有無を問題にとりあげたい(御手洗 2003: 485)。

 --事実と推測は分けて書きましょう。

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推測と評価の区別

 例文を。

 御手洗は……[略]……3時間を超える地域も含まれていることを明らかにし(御手洗 2003: 485)、天馬は通勤時間が3時間を超える世帯における男性の家事参加が極端に少ないケースを報告しており(天馬 2004: 322)、両者をあわせて考えると通勤時間の長さが家庭を空洞化させている大きな一因ではないかと推測され、共働きのケースなどを想定すると、やはり嘆じるべき事態であると評価せざるをえない。  

 末尾の「推測」も「評価」も、提示されている事実から、かなり高い確率で「確かにそう言いうる」かもしれません。しかし、学術レポートの中では、推測と評価とは、やはり分けて書くべきなのです。ちなみに「評価」とは、「良いと判断する」場合だけではなく、「悪いと判断する」場合も言います。

 原則的に、本論部分で書くべきなのは事実とその分析、それにもとづく推測です。(理論研究なら理論の紹介やその解釈をめぐる検討)。 改善してみましょう。

 第2節
 御手洗は……[略]……3時間を超える地域も含まれていることを明らかにしている(御手洗 2003: 485)。具体的には……[略]……。
 また、天馬は通勤時間が3時間を超える世帯における男性の家事参加が極端に少ないケースを報告している(天馬 2004: 322)。その事例とは次のようである。すなわち……[略]……
 第3節
 以上、通勤時間の長短と家庭生活との関連についてデータをいくつか見てきた。①総じて見ると、やはり通勤時間の長さが家庭を空洞化させている大きな一因ではないかと推測できよう。②共働きのケースなどを想定すると、やはり見過ごすべきではない事態であろう。とりわけ、「3時間以上」の条件が、改善されるべき課題として改めて浮かび上がったと言えよう。③ただし、以上の分析には○○という要因は入っていない。これを関連させた場合については、今後を期したい。

 第2節が本論、第3節が結論部分です。本論部分は事実分析に集中しています。手堅くなりました。

 結論部分の役割は

  • 「総じて見ると」 …… まとめ。総合
  • 「見過ごすべきではない」「課題として浮かび上がった」 …… 評価
  • 「ただし、以上の分析には」 …… 残された課題

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