ここは、徳川直人の、社会学研究の、いわゆる公式サイトの、口頭報告の、

カラフル社会の言語・文化・経験

……です。

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テーマセッション・コーディネート 「カラフル社会の言語・文化・経験」

■ 企画書

 私たちは極度に多色化した状況を生きている。公式・非公式の信号や案内、書類や電子デバイスにおける図像やアイコン、身近な道具や服装のデザイン等に、これほど色が溢れた社会はかつてなかった。私たちは色覚に対する強負荷のもと、色の意味やルールを読み解いて行動しなければならなくなっている。
 本セッションの目的は、これに関して散在している研究を持ち寄り、多色化のもたらす政治的効果や論理的帰結の諸相を探ることである。色の使用と他の社会的実践の間にどんな交互作用があり、言語や思惟の体系にいかなる特殊歴史的な形式と内容を与えているか、それがいかなる色の実践に跳ね返るか、それで日常的な色覚経験がいかに枠づけられ、どんな成員カテゴリーが生み出されているか、等。
 換言すれば、ここにいうカラフル社会とは物質文化における色の多用がかかる重要な社会的課題を生じさせるに至った社会である。その直の起源は19世紀に遡ることができる。18 世紀末にジョン=ドルトンが自己を含む通常ならざる色覚特性について初めて観察と考察をおこなった時にはただ興味深い科学的探究だったが、19 世紀、技術が色に満ちたものになると、色覚研究に大きな力が与えられ、件の特性が「色盲」とカテゴライズされて、社会を危険から守るための政治、労働者の職業倫理、当事者の人格や適性などに関する議論に転化した。近代の視覚中心主義にも色を軸とした転換が生じて批評や思想の系譜となり、目の規律に色覚の管理が加わった。厳格な色覚検査と進路制限を展開させた日本はその典型である。
 大きな課題であるのに従来これに関する社会学的な接近は殆どなされてこなかった。が、2010年代以降、散発的ながら資料発掘や研究が蓄積されてきている。それをふまえて、思想史的・系譜学的な研究、色覚の管理と経験の社会史や生活史、「障害」の社会的構成、差別や区別にかかわる今日の課題に関する研究などを募りたい。

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